このあいだ、クジラをみにいってきました。
「クジラをみてきた」と言うと、たいてい「クジラってみられるの?」ときかれます。
私も、ダイビングを始めるまで知らなかったので、クジラについての まめ知識をシェアしていきますね。
クジラ情報
どこでみられるの?
種類にもよるし、海はひと続きなので、どこの海でもクジラはいるのですが、今回行ってきたのはズバリ、沖縄です。
そうなんです、日本で会えるんです…!
なぜ沖縄なのか?というと「会える可能性が高いから」なのです。
クジラは常に海を回遊しているので、毎日船で沖にでているような人なら、出会える確率は高まります。でも、普段陸で生活している我々が、クジラに会いに行けるのはせいぜい1週間程度…。
その中で出会える確率が高いのは、沖縄や小笠原といった 太平洋の南側 なのです。
どういうことかというと
冬になると、普段、北の海や 南極付近の冷たい海で暮らしている世界中のザトウクジラが、繁殖や子育てのために、温かい南の海におりてくるんです。
子クジラにとっては、冷たい海はちょっと厳しいので、子クジラの体温が保ちやすい 温かくて過ごしやすい環境に移動してくるんですね。
こんな感じです。(図はザトウクジラの回遊図です)

そして 日本はちょうど、普段 アラスカ付近に住んでいるザトウクジラが、北海道の根室沖からずっと、日本列島に沿って沖縄、奄美諸島あたりまで降りてくるルートに入っているので、冬になると太平洋の南側でクジラに会うことができるのです。

どんなクジラに出会えるの?
「クジラ」ってひと言で言っても、そもそも どんなクジラがいるかって 結構知らない方が多いのではないでしょうか。(私も全然しらなかった…!)
そこで、私が個人的に学んで 面白かったクジラを いくつかご紹介しますね。
ザトウクジラ
今回会いに行ったクジラです。
特徴は、この大きい胸びれです。

世界中で “ホエールウォッチング” といえば、だいたいこのザトウクジラです。こういう写真、よく見ませんか?これはだいたいザトウクジラです。

ちなみに、なぜ “ザトウ” クジラなのかというと、潜っていく時に、身体を直角に折り曲げて潜水していく様子が、座頭(琵琶法師)の姿に似ていたからだそうな…!
マッコウクジラ
マッコウクジラは、こんな感じのクジラです。
この四角い潜水艦のような頭が特徴です。

知らないクジラだなぁと思う方が多いと思いますが、こういうイラスト、よく見ませんか?

なんと、こういうデザインのクジラのモデルがマッコウクジラなんですって!そういう意味では、意外と身近な存在のクジラさんです。
シロナガスクジラ
シロナガスクジラは、シュッと長い背中が特徴です。そしてなんと、クジラの中でも一番大きくて、地球上で最大の生物です。

声が大きいことでも知られていて、理論上はシロナガスクジラが6頭いたら、伝言ゲームで地球一周できてしまうといわれています。
クジラの鳴き声は、音程を変えて 長く続くものがあるので、たまに「歌」と呼ばれます。実は、人間にはきこえないけれど、世界中の海には クジラの歌が満ちているんですって。素敵ですよね。
イルカ
「ん?なんでここにイルカが出てくるの?」って思いますよね。
なんと生物の分類上は、イルカもクジラも「哺乳類ー鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)」という同じ分類なんです。
日本では、成体になった時の身体の大きさを基準に「4mより大きいものはクジラ、小さいものはイルカ」と分けているだけで、本当はイルカもクジラなんです。「へぇぇー!」ってなりますよね。おもしろいです。
食べられたりしないの?
これもよくきかれる質問です。「クジラに食べられないの?」って。
これもね、大丈夫なんです。
なぜならクジラの食べ物って、オキアミとか小海老などのプランクトンや、イワシなんかの小さな魚だからです。案外喉が狭いので、大きな獲物は食べられないんです。
(正確には、アザラシや大きい魚を食べるタイプのクジラもいますが、人間を好んで食べるクジラはおりませんのでご安心を…!)
そして なんと、冷たい海から 温かい海におりてくるクジラは、飲まず食わずなんです。クジラたちが普段住んでいる冷たい海はプランクトンが豊富です。でも南の海は、そこまで食べ物がないんです。
だからクジラたちは、冷たい海でたくさん食べて、たくさん栄養をつけて、脂肪栄養を蓄えてから南の海におりてきます。冷たい海にかえるまでの約半年近く、ほぼ絶食状態で過ごすんです。
人間が、何も食べ物がないところで 無意味に口を開けることがないように、クジラも、南の海では無意味に口をあけないので、間違って飲み込まれてしまうことも、食べられてしまうこともないのです。
クジラにあいに沖縄へ
こんな、クジラについて語るほど、昔からクジラが好きだったわけではないのですが、こんなに好きになったきっかけはダイビングです。
船に乗ってクジラをみにいく「ホエールウォッチング」はよく聞きますよね。しかしなんと「ホエールスイム」というものもあるんです。
どういうものかというと「人間が 海の中にお邪魔して、水中でクジラをみる」というものなんです。
それを話すと、よく「寒くないの?」ってきかれます。
…寒いですよ!!めちゃくちゃ寒いです、冬ですからね!!
しかも、クジラが泳ぐくらいの海だから、底も見えないような海なのですが、そこに静かに浮いていないといけないんです。そんな過酷な状態なので、ホエールスイムに参加するには、ダイビングのライセンスが必要で。
「せっかくライセンス取ったんだし、行ってみよう」と思ったのが一年前。その感動が忘れられず、今年もクジラに会いに行ってきたわけです。
今回 出会うことができたのは、親子のクジラでした。
子クジラは、お母さんクジラと違って 長く潜っていられないので、すぐに息継ぎのために水面にあがってきます。今回はちょうど、子クジラが水面で遊んでいるところを、お母さんクジラが 水中でじっと待っている場面をみることができました。
子クジラは、水面でしばらく遊ぶと、甘えたように水中のお母さんクジラのもとに戻っていきます。そしてしばらく、お母さんのお腹の下や背中に すりすりして甘えたあと、自分だけでスイーっと水面にあがってきます。
そしてまた、回転しながら泳いだり、ジャンプしたりして遊んだあと、水中のお母さんのところに戻っていきます。
これをずっと繰り返しているのですが、なんかね、すごいんです。愛がすごいんです。
そこに言葉はないのに
子クジラが、お母さんを信頼しきって 甘えて伸び伸びしているのも、お母さんが 子クジラを信頼して、子クジラの好きなように遊ばせているのも伝わってくるんです。
「自分に都合のいいように解釈しているのかな」って思ってしまうけれど、もう そうとしか思えないほどの愛なのです。

お母さんクジラは、ずっと水中の下のほうでじっとしているだけなんです。ほかの哺乳類のように、毛づくろいしてあげたり、ぺろぺろ舐めたりもせず、ただただ 水中に沈んでいるだけなんです。
だけど、子クジラが はしゃぎまわって、ちょっと遠いところまで泳いでいってしまうと、静かにそっと移動してまた子クジラの下まで行くんです。
そうすると、子クジラが ちゃんとお母さんクジラをみつけて「ママ~、みてみて さっきね~」という声がきこえてきそうな感じで お母さんクジラのもとに戻っていくんです。
そして、お母さんクジラの背中に寝そべってみたり、胸びれの間に挟まってみたり、お腹の下に潜ってみたり。
そしてなんと!お母さんクジラのお腹の下から頭をだして、しばらく様子をみていた子クジラが、水面に浮いてみている私たちに向かって浮上してきてくれたんです。「なんだろ、あれ。いってみよー」とでもいうように。
ぶつからないように、必死に静かに移動しつつ、感動で震えて感情が大忙しでした。
だって、これ、写真の右側に うっすらお母さんクジラが沈んでいるの、みえますか?

お母さん、こんなに深いところにいるのに。ひとりでこっちに来てくれるなんて。
怖がらないでくれてありがとう、嫌がらないでくれてありがとう。興味をもってくれて、信頼してくれてありがとうって。感謝と感動がとまりませんでした。
お母さんクジラもね、子クジラが 人間の群れに向かって浮上していっているのに、微動だにしないんです。「大丈夫。遊んでらっしゃい。」とでもいうように。
焦って、子クジラを守ろうとして間に入ってきてもおかしくないのに。
ありがとう、信頼してくれて本当にありがとう、あなた達に絶対危害はくわえないから。わたし、動物に信頼されるような人間になるから。
…なんて、陸でいうと冗談にきこえてしまうようなことも、本気で思ってしまえるほど 大きな愛と信頼でした…。
そしてしばらく、水面にいる私たちと、水中のお母さんクジラとのあいだを行ったり来たりして遊んだあと、お母さんクジラにやさしく寄り添われて、子クジラは大きな海に悠々と泳いでいきました。

「ではいきますね、遊んでくれてありがとう」とでもいうように、悠々と去っていく彼らの姿は本当に格好よくて。
「地球っておっきいなぁ」と思いました。
そしてもうひとつ感動したのが。
去り行く彼らに、私たちが「ありがとう、また会いに来るよー」って手を振って見送ったら、お母さんクジラが まるで返事のようなタイミングで、ブシューってブロー(潮吹き)をしたんです。「うん、またね」みたいに。
それがもう、感動して感動して。
本当に同じ哺乳類なんだなぁって。人間も動物も、本当は対等なんだなぁって。
なんだか心を通わせることができた気がして、本当に感動しました。
ダイビングの本格的な装備をしていてもなお、冬の海は冷たいし。朝は早いし。そこまでしてクジラに会いに行くなんて訳わかんないって、行く前は思っていたけれど。
こんな世界があることを知ることができて本当によかった。ダイビングのライセンス取って、本当によかった。
こんなに人生楽しくなるなんて、本当に思わなかったなぁって。
やはり私はこれからも、たくさん地球上のすてきなものをたくさん見ていきたいなぁ、と思ったのでした。
おまけ
せっかくガイドさんに「写真、好きに使っていいよー」と頂いたので、シェアしようかなと思います。
まずこちらは母クジラ。
成体のクジラは全長約15~17m。地下鉄の電車1両分くらいの大きさです。水中に沈んで子クジラが遊んでいるのを待っている時。
尾びれがおっきいですよね…!クジラは尾びれの裏側(写真にうつっていない面)が人間でいう指紋の役割をしていて、個体識別が可能です。

浮上してきた母クジラ。浮上してくると、いかに大きいかよく分かります。表面にくっついているのは、コバンザメです!「コバンザメのような」という表現がありますが、初めてみた時、これのことか!と感動しました。

水中で待っているお母さんのもとへ帰っていく子クジラ。どんなに遊びまわっても、必ずお母さんのもとに帰っていくのが、尊くて。感動したなんて言葉では薄っぺらく思えてしまうくらい、感動の光景でした。

母クジラの口先で優しくいざなわれて、たくさん遊んでいた子クジラもいよいよ出発です。母クジラの愛おしそうな感じ、伝わるでしょうか?

そうしたら、子クジラがくる~んとひっくり返って、仰向けになって伸びをしました。「愛されている安心感」みたいなものが伝わってきて、「親に愛されている安心感というのは、子供がのびのび育つことに繫がるんだなぁ」なんて考えてしまいました。

私も、いつか自分のカメラで水中の写真も撮りたいなと思います。世界にはたくさん素敵なところがありますが、海の中こそ、身近な異世界だなと感じるんです。
画像:イラストAC、Canva
水中写真:ガイドさん撮影

